interview
story of chigasaki moana
NPO法人もあなキッズ自然楽校
理事長 関山隆一
ケムリデザイン
代表 和田 義之
瀬戸建設株式会社
杉山 大輔
株式会社ラ・ルール
代表取締役 相田 秀和
みまもる仕事

おだわら・もあな保育園は
建材からつくり手まで、「オール小田原」の保育園。
地域としての魅力、またその土地で成長していく
子どもたちの未来に込めたメッセージとは?

場所:箱根仙石原
インタビュー実施日:2019.2

PROFILE

イラスト
イラスト
関山

関山 隆一/ NPO法人もあなキッズ自然楽校 代表理事

1971年神奈川県生。
1998年ニュージーランドに渡り国立公園にて現地ガイドとして働く。その後パタゴニア日本支社を経由し、2004年に帰国後アウトドアオペレーターの事業を立ち上げ、2007年NPOもあなキッズ自然楽校設立(2009年法人化)。
森のようちえんや自然体験活動を通して、長期的な子育て支援環境の確立及び地域に根差した実践を行っている。現在、NPO法人森ようちえん全国ネットワーク連盟 理事として日本の森のようちえんの普及活動に力を注ぐ。
http://moanakids.org/

和田 義之/ Kemuri design 代表

1968年茨城県生まれ。
1994年、平塚の野焼き彫刻家 藤田明子氏の選任アシスタントとして小田原に移住。製作会社「けむりデザイン製作所」を立ち上げる。店舗デザイン、オブジェ、看板、内装、家具、等製作をおこなう。1997年、熊澤酒造株式会社の店舗内装全般、酒のラベルなど、トータル的にを手がけ、2003年、「蔵元創作料理天青」の古民家移築新築工事のトータルデザインを監修。それをきっかけに、古民家、鉄骨、RC、小屋などの、リノベーションの依頼を多く手掛けるようになる。2008年 建築設計事務所「KEMURI DESIGN WORKS」事務所設立。2009年、子ども連れのお客様をメインとした「暮らしの遊びnico cafe」を立ち上げ。昼時はカフェでからあげを揚げて、午前午後夜間は設計業務に従事。
http://blog.livedoor.jp/nicoshop/archives/cat_88993.html

杉山 大輔/ 瀬戸建設株式会社 営業
     / OVACANS 代表

1972年神奈川県小田原市生まれ
桶屋と銅板金屋の両親のもと小田原の商店街で育つ。
建築は学校を卒業し現場を経験した後、瀬戸建設にて白紙の状態から構想を練り上げご提案する営業として従事。クライアントの楽しい暮らしと建築とデザインのバランスを一緒に考え土地探し・企画・設計・施工を提案を行なっている。地域の価値がよくなる建築を目指し、その為に必要な人・繋がり・デザイン・箱の形を考えている。また、OVACANSとして、日常にユーモアとバカンスをテーマに活動、ビルを1棟借り上げ、1Fもあな保育園さん2Fアクティブコワーキング3Fスタジオとしてコンバージョン。色々な人や事が合わさる(BLEND)ことで地域が楽しく良くなるために活動している。 https://www.setoken.co.jp/index.php

相田 秀和/ 株式会社 ラ・ルース 代表取締役

1964年 神奈川県生まれ。
1987年 貿易会社にて、渋谷ロフト立ち上げ当時から雑貨営業を担当。横浜中華街など国内雑貨店も担当し国内外の雑貨を学んだ。フランスのエブリシャブリエ輸入販売の事業部を立ち上げ、当時無名だったブランドの名が広く浸透するきっかけを作る。その後、筆記具の製造メーカーにてフランスのレシーフ社正規代理店を立ち上げる。
1994年 有限会社ラ・ルースを設立し、筆記具メーカーの営業を業務委託。木製品な どの取り扱いを開始しオリジナル木製品を開発、事業を拡大。
2003年 株式会社へ組織変更し自然環境に優しい商品である木製品に特化。森林の間伐促進のため間伐材商品の開発や、より自然志向が高いナチュラルソープのセンセイシャ日本正規代理店となる。
2014年 手法に無駄がないひきよせ技法を考案し自社ブランドひきよせを立ち上げ。 同年東京ビジネスデザインアワード優秀賞、グッドデザイン賞、翌年にはウッドデザイン賞を受賞。近年では、天然木シートの切り離せる名刺を開発しForest Good 2018 間伐・間伐材利用コンクールにて、製品づくり・利用部門 間伐・間伐材利用推進 ネットワーク会長賞を受賞。
https://la-luz.co.jp/

オール小田原でつくる保育園:

関山: 今日はみなさん、お時間いただいてありがとうございます。

小田原・箱根エリアの森林で林業を営んでいる田中林業さんにご協力いただいて、神奈川の林業、森と山の現場を見ながら全員でお話しできたらと、場を作らせていただきました。気持ちの良い山ですね。

皆さん: そうですね。よろしくお願いします。

関山: この春「おだわら・もあな保育園」の開設にあたり、さまざまな形で携わっていただいた皆さんと、改めてどんな保育園にしていきたいのか?小田原で大きくなる子どもたちについてどんな風に成長していって欲しいのか?それぞれの想いを伺えたらと思っています。

みなさんを私の方からご紹介させていただくと、まず今回の「おだわら・もあな保育園」の空間を設計していただいたケムリデザインの和田さん。そして、その空間を施工、作り上げていただいたのが瀬戸建設の杉山さん、そして子どもたちが遊ぶ遊具や給食を食べる木のお皿などを制作いただいたラ・ルースの相田さん、まさに“オール小田原”のチームで保育園を作ることが出来ました。

今回はみなさんにご協力いただきまして、いよいよ4月に園を開設する運びとなりました。
ありがとうございます。

:インタビューは相田さんのお知り合いである田中林業さんが手がける箱根の山に足を運んで。春の息吹を感じる中での座談会に。

あるものを大事につかう:

関山: まず最初に、和田さんには昨年秋に開設した茅ヶ崎市の熊澤酒造・ショコー産業の企業主導型保育園「ちがさき・もあな保育園」でも、設計をご依頼させていただきました。

茅ヶ崎も良い空間になりましたね。

和田さん: はい、無事に完成しましたね。
茅ヶ崎の方は使われなくなっていた森の中のプールに保育園を作るというチャレンジングな建物。今回は国府津にある鉄骨のビルの1階、環境は全然違いますが、あの空間を子どもたちにとってどう居心地の良い空間にするか、試行錯誤しながら形作ってきました。

関山: 和田さんは小田原で「nico cafe」という築80年の元建具屋さんをリノベーション、ランチやお茶、そして古雑貨などを販売するお店を手掛けながら、「KEMURI DESIGN WORKS」というデザイン設計事務所の事業を行なっていらっしゃいますよね。熊澤酒造をはじめ、西湘エリアを中心に店舗や住宅など数多くの空間を手掛けておられます。

和田さん: 
自分の場合は、デザイン設計の仕事を手がけているうちにどんどん、居心地の良い場所を探して、相模湾沿いを移動してきたら、気が付いたら小田原にお店を出していたんです。

関山: そうでしたか。笑 茅ヶ崎の前、もあなキッズ自然楽校がはじめて横浜以外の保育園を手がけた『認可小規模保育施設 大磯 こびとのこや』の内装をご依頼した時からのご縁ですよね。

和田さん: 2015年春でしたね。

関山: こびとのこやも内装は古材や無垢材を使い、また魅力的な園になりました。

和田さん: KEMURI DESIGN WORKSとしてのコンセプトとして掲げているのが、古くから使われてきた木材を再活用して、あるものを大事に使いながら空間を作ることを常に考えています。

伝えたいのは、ものを大切にすること。

新しいものだけを使うのではなくて、その地域に元々あったもの、古くなって使われなくなった扉や柱など、新旧のものをうまくミックスすることで、古いものにも新しい価値を持たせることができると思うんです。

:西湘エリアでさまざまな空間を生み出してきた和田さん。森の中で見つけた切り株の端材も和田さんにかかれば次の空間の材料に。

関山: 今回も入口の電灯が古い羽釜だったり、和田さんの遊び心のある演出が僕も大好きです。

杉山さん: あの羽釜いいですよね。外壁もうろこのような貼り方で、可愛さに溢れてます。

和田さん: ありがとうございます。笑

今回は床は地元かながわの杉、そして小田原板橋にあった古民家で使われていた建具や、羽釜や餅を入れる箱などの古道具を活用しています。子どもたちには、あの場所を通じて古いものを大切にする気持ち、そういったことが伝わっていくと嬉しいですね。

杉山さん: 木の香りを日々感じながら過ごせる、本当に素晴しい空間ですよね。

関山: そうですね。あの環境で成長できる子どもたちが一番羨ましいですよね。

:おだわら・もあな保育園の内装。古い建具と地元木材の暖かさ溢れる空間。入口の電灯は羽釜を逆さまにしたもの。

子育て環境に最適な小田原のまち:

関山: ラ・ルースの相田さんには、保育園で使う食器類の加工をお願いさせていただきました。地 元の木材を使った、地産地消のお皿です。

小田原市は神奈川で唯一、東京のおもちゃ美術館と調印した「ウッドスタート宣言」都市としても有名です。相田さんは小田原の地域産業の1つである、林業に深く携わっていらっしゃいます。
小田原の魅力ってどんなところなのでしょうか?

相田さん: そうですね、海もあって、山もある。素晴らしい環境ですよね。
子どもたちが育つ環境としては、僕は本当にオススメですよ。
でも、意外と大人たちの方がこの恵まれた環境を知らない、そんな風に感じることもありますね

:可能な限り地元の材を活用していきたいと話す相田さん。

関山: それは興味深い、どういったことから?

相田さん: 例えば、恵まれた自然環境ではあるけれど、キャンプ場やグランピング場の数は少ないですよね。せっかく環境が良いのだから、この自然をおもいっきり体感できる“遊び場”がもっとあって良いと思います。

せっかく身近に豊かな自然環境があるのだから、子どもたちがその環境を満喫できる場を大人たちが作ってあげる。そうすると、子どもたちも地域を知り、地域に愛着を感じてくれるはず。なので、もっと暮らしと自然を繋げる場を生み出してあげたいなと。

関山: なるほど。

相田さん: 僕は木材加工業だから、子どもたちが遊ぶ環境に地元の自然の中で育った木材を使うこと、実際に触って感じてもらえるようにと、いつも考えてます。

関山: もあなキッズ自然楽校は食育にも力を入れていて、子どもたちの給食は地元の食材を使って、オーガニックなものを提供しています。その一環で、子どもたちが使う食器も、地元の材を使ったものにしたくて、今回相田さんにご依頼させていただきました。

日々使っているものが、実は地域の環境と密接につながっている。いつか大きくなった時に、やっぱり地元である小田原の森や山を大切にしたいと思ってくれる。そう信じています。

相田さん、素敵な器をありがとうございます。

相田さん: いいものできましたよね。地元のヒノキ材を使った積み木のおもちゃや、組み立てられるプロダクトとか。子どもたちが地元の木にもっと触れられるきっかけを増やしたいですよね。
これからも、できることから進めていきたいと思ってます。

:ラ・ルースに訪問、実際に子どもたちが使う食器の製作工程を見学。1つ1つ職人が削り出す器での食事は格別な体験。

「職住近接」働く・暮らすを楽しめる地域に:

関山: 続いては杉山さんに。
杉山さんは、今回2つのポジションから関わっていただいてます。一つ目が和田さんが手がけたデザイン設計を形にする工務店瀬戸建設のスタッフとして、二つ目が保育園の上の2FでコワーキングスペースBLENDのプロデュースを行うOVACANSの代表として。

小田原で子育て中のパパでもありますよね。このまちの魅力についてはどうでしょう?

杉山さん: 先ほど相田さんもおっしゃていたように、確かにまだまだ僕ら大人も、この街のポテンシャルを理解できていないというのはあるのかもしれませんね。

僕は住宅をつくる仕事をしているのですが、山もあって海もある、暮らすには最高の場所です。ただ、その海と山がまだ街とはしっかり繋がっていない気がしますね。それぞれが独立しているというか。

そのためにも暮らしの中での週末の山の過ごし方、海での遊び方、もっと楽しみ方を伝えて行きたいですよね。家を建てるということは、家のことだけを考えての選択ではないはず。そのまちの四季折々の匂いや風景、これまでの歴史や思い出、1つ1つの積み重ねで街を好きになって、その街に住むという選択肢が出てくると思います。

今回のおだわら・もあな保育園も、海から歩いて3分の立地。そして、保育園の内装は和田さんが古建具と地元小田原材を活用しています。小田原で育つ子どもたちのために、地域の魅力にもっと触れさせてあげるのが大人の役割だと思いますね。

相田さん: 本当にそうだよね。

:おだわら・もあな保育園が入るビルを一棟借り上げ、コンバージョンを行ったのも杉山さん。2Fのコワーキングスペースも手がける。

関山: はい。今回1階はおだわら・もあな保育園、そして2階をコワーキングスペースになっています。その辺りはどんなコンセプトを持ってプロデュースされているのでしょうか?

杉山さん: これまでは小田原・国府津で暮らしながら、横浜や東京の職場に通うという方が多かったかと思います。それがインターネットの進化もあり、子育てなどの側面からも時短での働き方や副業や兼業など、働き方の多様性が一気に増えました。

これから「職住近接」、暮らしに近いエリアで働くというスタンスが増えて行くと思います。日中は2階のオフィスで働いて、午後保育園が終わったら一緒に帰宅する。そんなライフスタイルを、ここ小田原で描けたら素敵だなと思って。

:おだわら・もあな保育園から歩いて3分。そこには、美しい海と真鶴の方まで見渡せる絶景。

関山: 子どもたちにとってもそれは素晴らしいことですよ。大磯にある「こびとのこや」の2Fにも、1668というコワーキングスペースが併設されていて、まさにローカルの暮らしの理想だなと、日々感じています。

杉山さん: そうですね。コワーキングという場を通じて、子育てだけでなくて、働き方や経済的な繋がりも生みだしながら、県西エリアのあたらしいブランディングに繋がってくると思ってます。

「おだわら・もあな保育園」は、そんな大人たちが集う場になれたら、いいなあと思っています。

関山: そうですね、これからが本当に楽しみです。

いよいよ、この春から開園となりますが“オール小田原”でつくられた「おだわら・もあな保育園」。この場所から未来へ、大きく成長して行く子どもたちが数多く生まれることを願って。本当に今回はさまざまな形でご協力いただきまして、ありがとうございました。

今後とも、小田原の地の保育について、ご一緒に考えていけたらと思います。
引き続きよろしくお願い致します。

みなさん: こちらこそ。 引き続き、よろしくお願い致します。

:一人ひとりの想いが形になって、地域全体で子どもたちを育てていく保育園がこの春始動します。皆様ご協力ありがとうございました。